帳簿が欠けていてもそれ相応の理由があれば、青色申告は取り消されない

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帳簿が欠けていてもそれ相応の理由があれば、青色申告は取り消されない
 会計帳簿というものは大切なものである。商法では保存期間は十年と決められている。これには 帳簿にかぎらず、営業に関する重要書類が含まれる。青色申告の場合は、五年間保存しなければな らないことになっている。

 税務上の行政処分というのは、厳しいときには大変に厳しい。青色申告では、会社にせよ個人 にせよ、大蔵省令できめられた帳簿書類を備え付け、これにその取引に関する一切の記録を残 し、これらの帳簿書類を保存しなければならないことになっている。保存期聞は会社の場合は、 次の事業年度開始の日から五年間と決められている。個人の場合は該当する年の終わりの日の翌 日、つまり、通常一月一日から五年間ということになる。

 法人税法と所得税法では、帳簿書類をきちんと整理していなかったり、保存の状態が悪く、一 部でも欠けているときには、青色申告を取り消してもよいことになっているのだ。

 青色申告を取り消されるということは、税務上受けられるいろいろな特典を失うことになり、 大変な損失である。たとえば、繰越欠損金の繰越し控除を受けられなかったり、税金を余計に払 わなければならないという不利益な状況に追い込まれることになる。山弁医薬品販売株式会社は、資本金六百万円の同族会社である。この会社の事業年度は毎年七 月一日から翌年六月三十日までである。ある事業年度分の税務調査のときに、七月一日から十月 三十一日までの帳簿書類と伝票や証愚書類が完全に保存されていないという理由で「青色申告取 り消し」の処分を受けた。

 すなわち、帳簿書類などが完全に保存されていなかったばかりか、でたらめな決算が行われて いたと税務署は見て、青色申告をするときの要件に欠け、法令に違反するというのである。

 この会社は実は業績がよくなかった。その前の事業年度は、繰越欠損金が千二百万円もあっ た。当期も欠損ではあるが、いくらか持ちなおし、五百万円の欠損で済んだ。本来、車問色申告が 生きていれば、合計して千七百万円の欠損金を繰り越すことができ、利益が出たときに、その分 を帳消しにできるのが、できなくなったのである。

 会社は青色申告の取り消し処分を不服として審判所で争った。帳簿書類などが整理保存が欠け たのは、運悪くその年の十一月半ばに支払い手形の不渡りを出し、銀行取引停止の処分を受けた ので、債権者に前記の期間の帳簿書類を持って行かれてしまったのであった。

 しかし、公認会計士が念入りに、その期間中の資産負債の動きを調査し、損益の状態も正確に 修正していたのであった。結果、国税不服審判所で会社の主張が通り、税務署が負けることにな った。