サラリーマンが原稿料や講演料の税金の還付金を多くもらうには

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サラリーマンが原稿料や講演料の税金の還付金を多くもらうには
サラリーマンの所得税法上の中心となる所得は、給与所得です。給料や賞与などがこれを構成 します。したがってサラリーマンが原稿料や講演料を稼いだときは、雑所得になります。雑所得の金額は、 収入金額から必要経費を差し引いて計算します。

 国野一郎(四十一歳)はある一流メーカーの優秀な社員。ときには関係雑誌の原稿を書かされた り、講演によばれたりする機会があります。とはいっても、そこはやはりアルバイト。原稿料、講演 料は謝礼程度で、多い月でも三万円を超えることはありませんでした。彼は忙しいことも手伝って別に申 告はしていませんでした。というのも、彼の頭の中には、年間二十万円までのアルバイト収入は、申告しなくてもよいということを誰かに聞いた覚えがあったからです。

 アルバイトをし始めてから三年が過ぎ、収入も年を追うたびに増えました。昨年は七十万円を超え 、とうとう、彼のところへも、税務署から申告用紙がまわってきました。

 原稿料、講演料などは、額面の一割の源泉徴収分を差し引き、支払い者が税務署へ書類ととも に、源泉徴収所得税を納める、その結果、彼が雑収入を受け取っている事実がわかるのです。 講演会などは、会社の出張のときであったり、上司から頼まれて義理で引き受けて行くので待遇がよく、旅費などもあまりかかりません。原稿を書くのも、ビジネス上の手慣れたテーマなの で、こと新しく調査したり、本や資料を購入することもないのです。そんなわけで、彼はべつに必要経 費もとらず、昨年中にもらった雑収入を全部記入して、支払い明細書を添付して確定申告しました。 申告を終えて数日たったある日、たまたま講演先で、ある講師と一緒になりました。その人から、

 「あなたの税務署では、講演料の経費を何割ぐらいみてくれますか」

 と聞かれました。一郎はなんのことかと聞き返したところ、その人の友人は三割も経費をみてもらって いるので、自分もそうしたら、「二割しか認めない」といわれたと憤慨していました。 原稿料にせよ、講演料にせよ、いただいた金額そのままが所得になるのではないということで す。それこそ、そのまま全額を所得にして申告するなんて、愚の骨頂だったと彼は理解しました。

 結局、彼の昨年の雑収入は七十六万円。これは額面だから、七万六千円が税金として先取りさ れているわけです。必要経費をきちんと計算してさえいれば、天引きされた税金のうちほとんどが 還付されるはずでした。

 彼は「今まで損した分も」と、その次の年から原稿料と講演料について、全部五Oパーセ ントを経費として差し引いて申告しました。そうしたらやはり税金のほとんどが戻ってきたのです。 ところが、しばらくして税務署から呼び出しがきました。なんのことかと思って出かけていった ところ、五Oパーセントの経費の内訳を示せというのです。自分はこのくらいかかっているはずだ から、これだけ差し引いたのであると頑張ったが、どうも税務署の言うほうが筋がとおってい たのです。

 原稿料とか講演料について、その二割から三割ぐらいを経費とみるのは、税務署の物差しで裁 量すれば、そのくらいかかるのではないかということで、証拠となる計算書類、がなくても必要経 費を差し引いてあげています。いわば情状酌重です。本来なら領収書など証拠となる計算記録に もとづいて、必要経費を認めるのだというのです。

 なるほどと理解した一郎は、すでに申告した年の分については、所得税を追加していくらか納 め、それからというものは原稿用紙代だとか、参考書代だとか、関係のある費用は克明に記録す る習慣にしたのです。