総勘定元帳だけでもつけておけば、青色申告を取り消されることはない青色申告では記娠が義務づけられている。記帳は帳簿に記帳しなければならない。では、どんな 帳簿が必要なのか。総勘定元帳一冊でよいのか、仕訳伝票だけではいけないのか。帳簿がなくと も、決算をしようと思えばできるわけだが…。
青色申告をすると、白色申告よりも所得税が安くなる特典がある。また、調査をした上でなけ れば、税務署は更正することができないという定めもある。一方、青色申告をしていないとき (白色申告)は、税務署の独自の判断でその所得金額を推計し、所得税額を決めることができる。 これは非常に大きな違いである。
青色申告をしていれば、税務署が調査した上でなければ、税額を増やしたりできない。つま り、更正という税務署の強大な権力を、青色申告をすることによってセーブしているのである。
白色申告の場合は、勝手にというとオーバーだが、いろいろな条件から税務署の職権で、あな たはいくらの所得税を納めなければいけないと、更正したり、決定したりできるのである。
更正というのは申告があったときに、その申告された所得金額または税額を税務署が直すこと で、決定というのは、申告がないときに税務署が所得金額と税額を一方的に決めることである。
青畑市郎(四十歳〉は、米屋と簡単な食料雑貨を売っている庖を経営している。先代の庖を引き 継いだので、のんきそうに見えるが、なかなか忙しい。それでもずっと青色申告をしている。年 聞の所得金額は五百万円を割ったことはない。毎日仕事に追われていて帳簿を完全につけている 暇がない。仕訳伝票だけつけている。これで申告には困らなかった。
まず勘定科目を二十数項目きめて、毎日仕事が終わると、その日の現金や預金の動き、それか ら売上高と仕入高、経費等を仕訳伝票に記載して、一ヵ月分ごとに試算表をつくってまとめてし まうのである。実に能率的だと自負していた。
かつて税務調査のときに、青色申告をしている人は、次の要領によって記帳しなければならな いと注意を受けた。法令違反で青色申告を取り消されるかも知れませんよともいわれた。
(一)仕訳帳(取引の発生順に、取引の年月日、内容、勘定科目および金額を記殺すること) (ニ)総勘定元帳(各勘定ごとに、取引の年月日、相手方の勘定科目および金績を記載すること)
これはたしかに法令で定められている。仕訳帳の代わりに仕訳伝票を佼うことは差し支えな い。だから総勘定元帳なんかっけなくたっていいやと、相も変わらず仕訳伝票だけで押しとおし た。最近やってきた調査官は、前回の注意をなぜ守らないのか、と初めから高飛車にきた。税務 署長の指示に従わなかったという理由で、三年前にさかのぼって青色申告を取り消されたが、総 勘定元帳をつけておけばこんなことにはならなかった。