投機目当ての土地でもなにかに使用していれば、借入金利子は取得費に入る

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投機目当ての土地でもなにかに使用していれば、借入金利子は取得費に入る
 不動産を買うとき、銀行から借入金をすることがよくあります。もちろん借入金に対しては利子を払わ なければなりません。この利子の額は馬鹿になりませんが、実はこれが取得費になるのとならないのとで は、利益の金額がずいぶん違うのです。

 重井富二郎(五十九歳)は、不動産会社のすすめで厚木市のちょっとはずれに土地400平方メ ートル(約百二十一坪〉を1500万円で買っていました。いずれ値上がりしたら売ろうという投機買いです。三年経って2800万円で売らないかという話がありました。これは短期保有資産の譲渡だか ら、売却代金から取得費と譲渡経費とを差し引いた残りの譲渡益の40パーセントは所得税とし て取られてしまいます。買い手に税金分をなんとかみてくれと頑張って、三千百万円で話をつけました。

 買ったときの1500万円のうち500万円は自己資金でまかなったのですが、1000万円については、銀 行から五年の長期借入金で埋め合わせていました。年利は8.7パーセント、売ると きまでの支払い利息の合計は250万円を超えています。これを取得費にプラスすると取得費が ふくらみ、譲渡益が小さくなるので、申告するときには、この支払い利息2,513,580円を取得費に算入したのです。ところが税務署はこれを間違いだと指摘しました。「早く取得費 から支払い利息分を差し引いて、修正申告したほうがいいですよ」と親切にいってきたのです。

 しかし、富二郎は税務署の忠告を聞き入れませんでした。固定資産の取得のために借り入れた資金の利子のうち、その 固定資産の使用開始の日までの期間に対応する部分の金額は、取得費または取得原価に算入して よいことになっているはずだという主張なのです。どうしても税務署の言うことを聞かないで いると、とうとう更正の処分を受けました。取得費のうちから支払い利息分相当額を減らして、譲渡 益を大きくし、所得税額を増やした処分です。

 これに対して富二郎は税務署と争ったのですが、結果は負けです。

 「借入金の利子のうち、その固定資産、この場合は土地を使用し始めるまでの期間に対応する支 払い利息は取得費に算入してもかまいませんが、あなたはこの土地をなににお使いになっていた というのですか。ただ、更地のままにしておいて、値上がりを待っていただけじゃありませんか」

 こういわれると、二の句がつげません。税務署のほうも、無情のようだが法令がそうなっているの だから仕方ありませんな、と同情的でした。富二郎は泣く泣く所得税を追加払いすると同時に過 少申告加算税を払わざるを得なかったのです。  ほんとうはこの土地をただ遊ばせておかず、売る少し前にでも駐車場にでもして貸すなり、な にかに使っていればよかったのです。そうすれば、それまでの期間に対応する分だけでも支払 い利息を取得費に入れることができたのですから。