仮装経理であっても重加算税がかからないこともある

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仮装経理であっても重加算税がかからないこともある
 帳簿上の隠ぺい仮装の経理は、重加算税を課される原因になります。更正されて法人税額が増え、そ れに30パーセントの重加算税を剖附されるとなると、これはかなりの痛手でしょう。事業税や法人住民税も右へならえとなっていきますので、会社の打撃は痛烈です。

 堀内興業株式会社は、東京都千代田区内のちょっとしたビルの三階と四階を借りて、栃木県内 でレジャー・センターを経営したりしていました。当初は景気がよかったのですが、石油ショック以来思わ しくなくなり、ビルの家賃を払うのも難しい状態になっていくと、四階を他に転貸しすることに したのでした。

 家主である福禄不動産株式会社に、関係会社に転貸しすることで了解をとりつけて、藤木実業 株式会社という堀内興業の社長が、いくらか株をもっている会社に転貸しする話がまとまりました。 藤木実業から権利金として三百万円受け取りました。これは返さなくてもよい権利金だから、期内 興業としては、本来次のように会計処理をし、収益にあげるべきでした。

(借方)現金預金300万円 (貸方)権利金収入<収益勘定>300万円

 景気の悪い堀内興業としては、まことに有難い収入でした。 これを経理の担当者は賃貸借契約書の調印が完結しないときに、権利金を受け取ったので、次 のように処理してしまったのです。

(借方)現金預金300万円 (貸方)仮受金300万円

 ここで、仮受金なる勘定の性格をよくよく考えてみると、これはかりに預かったという預かり 金の勘定であって、負債勘定に属し、利益の発生にはつながらないものです。従って、これはまちが いなのです。もし、仮受金として処理していても、賃貸借契約が完結し、この三百万円の権利金を返 済する必要がなくなったのであるなら、すぐに次のように修正の処理をしなければなりません。

(借方)仮受金300万円 (貸方)権利金収入300万円

 そうすれば、負債必消えて収益が発生したことになる。決算のときに、こういう会計処理をす べきだったのですが、経理担当者がついうっかり見落として仮受金のままにしていました。そうすると当然300万円だけ利益の発生が少なくなっています。運悪く税務調査が、確定申告をして意外に早い時期 にありました。調査官は賃貸借契約書の記載内容を吟味し、返さなくてもよい権利金を仮受金にして いるのはおかしいじゃないかと言いました。たしかにおかしいのです。

 結果として仮受金否認、権利金収入の計上 洩れとして三百万円の所得金額を増やすと同 時に、帳簿上隠ぺい仮装の事実があったから ということで、三百万円に対応する法人税額 に対し、さらに重加算税までかけました。 会社は三百万円については、経理担当者の 間違いであるから、致し方ないが、重加算 税までかけるのはひどすぎると不服を申し立 てたのです。

 もちろん、次の事業年度では調査官の指摘 を受けて、すぐ収益に直していました。とうとう 国税不服審判所まで行き、そこではこの程度 の経理のミスは隠ぺい仮装といえないと、重 加算税を取り消したのです。

 不服であったら一応は訴えてみるのもひとつの手だと言えるでしょう。