減価償却費は決算書に「損金経理」をしないと認められない

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減価償却費は決算書に「損金経理」をしないと認められない
 日本全国の会社、法人が減価償却費として損金に計上する金額は、十兆円を越している。もし、 滅側償却政の損金算入を認めないものとすれば、会社、法人は巨額な税金を負担しなければならな い。だが、損金にするにもそれなりの定めがある。

 減価償却の対象になる資産は減価償却資産といい、有形の固定資産がもっとも多く、無形固定 資産や生物もそれに入る。減価償却授を計算する方法としては、会社、法人の場合は定率法を選 択することが多く、定額法がそれに次いでいる。なにをどういう方法によって減価償却するかに ついては、税務署長に届けでておかなければならない。

 また、減価償却費の計算の明細書は、確定申告書に添付しなければならないことにもなってい る。その他、減価償却費を計算するには、法人税法とその関係法令では、笑にこまかいことがい ろいろ決められているのだ。全国的には巨額な税金を免除しようというのだから、当然のことか もしれない。

 とくに計算の基礎になる取得価額についてどうするのか、そのものの耐用年数や償却率はどう なのか、突にこまかい定めが設けられている。耐用年数などは会社が勝手にきめればいいはずだが、それを認めると、ある会社は短期間でたくさんの減価償却授を計上したり、ある会社は同じ 固定資産について長い期間にわたって、少しずつの減価償却費しか計上できないという不均衡が 生ずるので、法定耐用年数によることとなっているのだ。

 こういうこまかい点はそれとして、もっとも基本的なことは会社が各事業年度で損金の額に算 入できる金額は、償却費として「損金経理」した金額のうち、選定した償却方法で計算した金額 の範囲内であるということである。

 中川医療器株式会社は、つい最近設立した会社で、医療用の器械を製作している。事務所を初 めニヵ所の工場の建物、その他機械設備等減価償却の対象になる資産はたくさんある。最初の事 業年度で、建物についてはすべて定額法により、機械設備等については定率法で減価償却するこ とにし、法令の定めによってきちんと計算をした。その内訳をまとめると次のようになる。

(種類)(減価償却費)

 建物 九十八万三千六百円
 機械装置 百三十一万六千八百円
 器具備品 三万六千六百円
 合計 二百三十三万七千円


 これを会社の帳簿に会計処理を記載せず、もちろん決算書にも計上せず、いきなり確定申告書の付属明細書にだけ記殺し、会社の当期利益から二百三十三万七千円を減額して、所得金額を算 出し、法人税額を計算したのである。

 税務署から、この減価償却費は認められないとやられた。損金経理をしていないからである。 つまり、減価償却費の計算内容、方法はともかく、帳簿上に記載され、決算書の貸借対照表と損 益計算書に、その実綴が明らかにされているときは損金経理の要件が充たされていることになる が、そうでないときはだめなのである。