販売促進費とは「直接的に販売が促進される費用」のこと

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販売促進費とは「直接的に販売が促進される費用」のこと
 販売促進費ならば、その支出額の全部が会社の損金になる。一般の寄付金ならば、損金算入限度 額を超えている部分の金額は、損金にならないで課税を受ける。その金額が大きければ大きいほ ど、課税上の争いも深刻になる。

 小宮化学工業株式会社は資本金五千万円で、化学工業関係の原材料のメーカーだ。その製品を 材料として相当量年間に使ってくれる町井理化学株式会社がある。この会社は資本金三千万円で 小宮化学と同族関係にある。町井理化学は工場が市街地の中にあるため、近隣の苦情が多かっ た。かねてからどこか適当な敷地を見つけて、移転したい希望を持っていた。

 たまたま、小宮化学は埼玉県の市街地を離れたところにあり、敷地も十分で、二万平方メート ル(約六千坪)のうち、将来、従業員の宿舎でも建てようかと思って空地のままにしであった土地 が、五000平方メートル〈約千五百坪〉あった。この土地を町井理化学で使わないかと話を持ち 込んだ。

 町井理化学とすれば、現在工場が建っている敷地が一八五0平方メートル(約五百六十坪)しかな いので、敷地としては十分である、なんとかこの話をまとめたいということになった

 問題は売買の値段である。この土地は小宮化学の帳簿価額では、三千九百六十万円である。十 何年も前に買ったものであるから安い。現在の時価は一億五千六百万円はする。町井理化学はこ んなに高い時価ではとても買えない。なんとかもっと安い値段にして欲しいという。この点で交 渉は難航した。  

 小宮化学のほうでも時価で売れば、一億一千六百四十万円の土地譲渡益がでる。そうすると、 法人税等の負担が大きくなる。ところが、さすがに小宮化学には知恵者がいた。町弁理化学を小 宮化学の隣接地に移せば、従来よりも取引関係は緊密になり、売上高もさらに増加するだろう。 そうなると、この時価との差額は販売促進費と考えてもいいじゃないか、半永久的に取引が増大 してゆくのだから、このくらいのものは安いものじゃないかというのだ。

 結局、帳簿価額のままで売ることにした。小宮化学の会計処理は、次のとおりである

(借方)現金預金3,960万円 (貸方)土地3,960万円

 時価で売ったものとすれば、次のようになる。

(借方)現金預金3,960万円 (貸方)土地3,960万円

 □11,640  土地譲渡益11,640 15,000万円 15,600万円

 この□について、税務当局から追及されたら、これは販売促進費に該当するものだとして 逃げようと空欄にしたわけである。

 やはり、これは問題になった。販売促進費は直接的に販売が促進されるために使われる費用で なければならないというのである。町井理化学を移転させることによって、販売が促進されると いうが、それは将来に対しての期待であって、いますぐ効果があがるわけではないということ で、とうとう寄付金であると判定されたのである。