観光が主な海外渡航費用は仕事に要した費用との按分次第

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観光が主な海外渡航費用は仕事に要した費用との按分次第
 海外渡航に要する費用は、一口の金額が大きい。そこでこれをめぐる問題がよくおこる。基本的 には観光渡航の費用は、必要経費にもならないし、会社の損金にもならない。しかし、経営上の業 務にかかわりのあるものは別だ。 海外渡航は三種に分けられる。まったくの業務上の渡航である場合、業務上の渡航のついでに ちょっと観光をしてくる場合、観光が主でついでに仕事もしてくる場合である。

 純然たる業務に関連する海外渡航のための費用は、航空運賃を初めとして宿泊費や現地での諸 経費、全額が必要経費になり、損金になることは当然のことである。きちんとした会社は海外出 張旅費規程を作っている。国家公務員にもそれがあるからよく参考にされる。

 杉野商事会社は、主としてヨーロッパから食器類を輸入し、園内で卸売りしている小さいが、 古い会社である。社長である杉野竜夫(四十五歳)は、若さにまかせて年に四、五回は西ドイツ、 デンマーク、ベルギー、そしてフランスなどへ出かけている。ちょっと出かけるとすぐ二百万円 ぐらいの費用はかかる。だが、外国の食器は日本のものと違って、センスがいい上に長持ちする ので、日本では相当の値段で売れる。旅費分は簡単に浮いてしまうわけだ。

 あるとき、社長は税務署から調査にきた職員と、馬鹿にウマが合い、調子にのって話し込んで しまった。

 「フランスの女性もよいが、西ドイツのハンブルクへ行って見なさい。ポーランド系あり、チェ コ系あり、小柄で日本人にぴったりなのが随分いますよ。ヨーロッパへいらっしゃる人なら、ど こへいったら一番楽しいか教えてあげますよ」

 とくとくとしてしゃべってしまったのである。

 「それでは、社長さんは仕事で行ったついでに遊んでくるんですか。それとも初めから両方の目 的で行くのですか」

 しまったと思ったがもう遅い。

 「そりゃあ、もちろん仕事優先ですよ」
 「ほんとうにそうですか。どちらかによって、ください」

 どうちがうかというと、業務と観光とをあわせた目的の旅行のときには、全体の費用をそれぞ れの期間で按分するのである。たとえば、西ドイツとデンマークへ商用と観光をかねて旅行し、 費用が百八十万円かかり、商用の日数が十日で、観光の日数が五日であるとき、全体の三分の てつまり六十万円は経費にならないのである。

 業務を第一の目的として出かけて、たまたま、十五日のうちの三日だけは観光に費やしたとい うときは、往復の航空運賃などを差し引いた残りを、この日数で按分して経費にならないものを はじき出すのである。百八十万円のうち、六十万円は航空運賃だったとすると、残りの百二十万 円の十五分の一二、つまり、二十四万円は経費にならない金額となるのである。